ベトナム基礎データ
国土:約33万k㎡(九州を除く日本の面積に相当)
人口:9467万人(2018年推計)
平均年齢:30.9歳(2015年)
首都:ハノイ
行政区分:5直轄都市(ハノイ、ホーチミン、ハイフォン、ダナン、カントー)と58省
名目GDP:2450億USD(2018年)
1人当たりGDP:3000USD(2018年)
実質GDP成長率:7.0%(2019年)
輸出総額:2447億USD(2018年)
輸入総額:2375億億USD(2018年)
外国直接投資:191億USD(2018年)
宗教:仏教が多く、カトリックやカオダイ(新興宗教)など
在留邦人:2万2125人(2018年10月1日現在)
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ベトナム経済の成長
ベトナムは市場経済を取り入れた1986年のドイモイ(刷新)政策以降、大きな経済発展を遂げてきました。
特に日本企業にとってのベトナム投資ブームは3回あり、第1次はアメリカの対ベトナム経済制裁が解除された1994年ごろからです。
製造業向けの輸出減税や安価な労働力が魅力となり、大手製造業が生産拠点を、ハノイを中心とした北部に作り始めました。
第2次のブームは、ベトナムがWTOに加盟した2007年前からです。やはり製造業を中心に、北部以外の南部や中部にも進出していきました。
2008年のリーマンショックで終息した後、2010年代からは第3次ブームが起こっていると言われます。
近年では6~7%という高い経済成長率で、アジアの中でもとりわけ注目されています。
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投資の有望性
ベトナムの魅力は安価な労働力、勤勉な国民性、親日感情、1億人に近い人口など、経済成長以外にも数多くあります。だからベトナム進出ブームが起こったのです。
また、「チャイナプラスワン」や「タイプラスワン」など、進出した他国の一極集中リスクを避ける意味でも、ベトナム投資が進んでいます。
当初は大手の製造業が中心でしたが、現在は大手企業から中小企業、製造業からサービス業まで、多種多様な日系企業がベトナムに進出しています。
FDI(海外直接投資)でも日本は毎年ベスト5に入る投資国です。
当初のベトナムは生産拠点であり、日本を含めた海外への輸出がメインでした。しかし近年の経済成長と所得の増加により、モノやサービスを売る「消費国」として、大きな「内需」が期待されています。
注意すべきこと
- 数字の裏の意味
- 価格と価値の関係
- 現地調達率の低さ
数字の裏の意味
ベトナムが日本にとって重要な投資先の一つであることは間違いないでしょう。経済成長も今後数年に渡って堅調に推移すると予想されています。
しかし、日本人や日本企業はベトナムの正確な姿を、誤解しているケースもあります。例えば数字です。ベトナムの1人当たりGDPは当局による再計算の結果、3000USDとなりました。この数字は自動車や家電製品が急激に売れ始める所得と言われています。
ただ、人口の64%は都市部でなく地方に住んでいます。ベトナムでは都市部と農村部での所得差が非常に大きく、都市部でも貧富の差は拡大する一方です。
日本は何事においても中間層がメインと判断しますが、ベトナムは上下で極端に分離していることも珍しくありません。つまり、3000USDの層は主流ではないのです。
価格と価値の関係
日本では、一定の品質が保障されているという前提で、より安い商品を求めます。しかし、ベトナムでは、金額と品質は基本的に正比例の関係です。安くて良いものは基本的に存在せず、良いものは高いのが原則です。
ベトナムは物価の安い国とされていますが、世界基準で高品質な生活を続ければ、先進国以上の費用が必要な場合もあります。
人件費も同様です。確かに人件費や最低賃金は低いのですが、安い賃金で採用できるのは単純作業のワーカーなどです。彼らも専門性を身に付ければ、すぐに給料の高い会社に転職してしまいます。
周辺国に比べても給与水準は低いものの、安い賃金で優秀な人材を雇えるわけではなく、毎年の給与アップも考える必要があります。
現地調達率の低さ
中国など他国での生産や加工のベトナムシフトを考えて、当地を訪問する企業は多くあります。弊社も多くのお客様の調査や設立をサポートしてきましたが、調査段階での頓挫も少なくありません。
その理由は『中国より高い』からです。コストが全てではありませんが、ベトナムで最も期待され、重視されているのはコスト削減ではないでしょうか。
ではなぜ、コストダウンが図れないのか? 実はベトナムは、製品の原材料の多くを輸入に頼っています。鉄、アルミ、プラスチック、布地、紙などを、中国、台湾、韓国、日本などから輸入しているため、運賃や関税でコストがアップするのです。
原材料費の価格を人件費等で吸収できなければ、少なくも製造業においてはコストメリットが出せません。
進出成功のために
ベトナムへの進出を成功させるためにはまず、企業の意識変革が必要です。 日本や中国での生産や商品をそのまま流用すればコストダウンできるという先入観は捨てて、ベトナムをどのように利用すれば自社に最もメリットがあるかを考えましょう。 そのような意識でベトナムをとらえたときに、最も大切なのはベトナムの現状を知ることです。 どのような品質や価格の原材料が入手できるのか。 どんな人材にいくらで業務を任せられるのか。どのくらいの期間とコストで会社や工場が設立できるのか。 そして、競合他社よりも高い優位性を見つけて、最も効率的に進出し、事業を継続するための方策を検討するのです。